MPPC側の映画製作(2)

 カーレム社では、監督のシドニー・オルコットをイギリスに派遣し、ヨーロッパの人々やアメリカへやってきた移民向けの作品を演出させたという。

 大手のヴァイタグラフ社では、「実生活の情景」を扱った映画を製作し、ヨーロッパでも文芸作品より人気を得た。「実生活の情景」シリーズは、15分にうまく収めるため、短編小説に似た筋で、基本的な内容は、1人の若者が若い娘と出会い、結ばれるというハッピー・エンドのものが多かった。

 また、1910年の夏にデビューしたジョン・バニーの喜劇が人気を得た。後のマック・セネットが指揮するキーストン的な馬鹿げたおかしさとはまったく異なった軽喜劇だったといわれている。

 さらには、労働者の闘争についての作品も製作しており、この分野では後に同テーマの映画を製作するD・W・グリフィスに先駆けていたという。


(映画本紹介)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

映画誕生前から1929年前までを12巻にわたって著述された大著。濃密さは他の追随を許さない。