D・W・グリフィスの作品 1909年(1)

「THOSE AWFUL HATS」

 D・W・グリフィス監督作品。アメリカン・ミュートスコープ・アンド・バイオグラフ社(後のバイオグラフ社)。

 この作品は、女性に対して、映画鑑賞中は帽子に取るように呼びかける映画となっている。当時の女性たち帽子を被っており、映画館では帽子が後ろに座る人たちにとってはスクリーンを見るためには邪魔だった。現在でも、映画上映前には「携帯電話の電源は切りましょう」といった注意を呼びかけるが、それの1909年版といえる。

 とはいっても、単純に呼びかけるだけではなく、2分の上映時間の中に工夫が凝らされている。映画を上映する映画館(二重焼付けで上映されている映画も見せている。本筋に影響を与えることはないが)に、派手な帽子を被った女性たちがやってくる。そこに、画面の上部から巨大なクレーンなようなものが登場して、女性の帽子を取っていき、観客たちが拍手喝采するというシュールな展開となっている。さらに、もっと派手な帽子を被っている女性は、クレーンによって身体ごと連れ去られてしまう(ここでは、ストップ・モーションを使った入れ替えトリックにより、女性は人形へと変わっている)。

 この極端にシュールな展開は、後のグリフィスの真面目な映画にはないおもしろさを持っている。当時のグリフィスはシリアスな物語から喜劇までを受け持っていたが、グリフィスは喜劇を苦手としていたと言われている。だが、この作品を見ると、グリフィスの喜劇への感覚もなかなかのものだ。

 ちなみに、バイオグラフ社は喜劇部門を後にキーストン社の製作責任者となるマック・セネットに頼むことになるが、そのマック・セネットはグリフィスの弟子として修行を積んでいた。この作品にも出演している。



(DVD紹介)

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

 バイオグラフ社所属時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。多くが1巻物(約15分)の作品が、全部で22本見ることができる。

注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。