エッサネイ社、IMPの作品 1909年
「MR.FLIP」
「やぶにらみ」の愛称で慕われたベン・ターピン主演。エッサネイ社の作品。
女性の顎を触りたがるベン・ターピン演じる主人公。理容室の女性、バーの女性など、あらゆる女性にちょっかいを出すが、ことごとく仕返しをされてしまうという、4分程度の小品。
偏執狂的に女性の顎を触るターピンの姿は少し異様である。
技法的には、基本的にワンシーン・ワンショットで撮影されている。女性が復讐のために、椅子の下からはさみを突きたてる部分のみクロース・アップで撮られていて、その後はさみの上に座ってしまうターピンが痛がる様子が伝わってくる。かなり残酷だ。
ちなみに、ターピンはこの後もエッサネイに所属し、後に(1915年)エッサネイに移籍してくるチャップリンとの共演作もあり、チャップリンを食う演技を見せてくれるが、この作品にはその片鱗はあまり感じられない。
「HIS LAST GAME」
IMP製作。
野球の試合に出場予定のネイティブ・アメリカンの男性に、ギャンブラーが八百長を持ちかけてくる。断るネイティブ・アメリカンの男性はギャンブラーといさかいとなり、ギャンブラーを殺してしまう。男性は死刑になるが、保安官の計らいで最後の試合の出場が許される。
10分強の作品だが、力強いストーリーに支えされている。野球の試合は、草野球よりもひどいし(その試合のためにネイティブ・アメリカンの命が失われていくと考えると、それはそれで哀しさが増す)、資金不足からだろうが、ユニフォームのチーム名は既存のユニフォームの上にチーム名を書いた布を貼り付けて処理されている。それでも、力強いストーリーは傷つかない。
ラスト近く、銃殺されようとしているネイティブ・アメリカンと、死刑を止める文書を持った人物が馬で駆けるカット・バックは、技術的に成熟していないものの、緊張感を高めることに成功している(途中で馬が倒れたときは、思わず声を上げてしまった)。
ネイティブ・アメリカンが主人公となっているのは、白人の命よりも軽く見られており、死刑となっても反感を買いにくいという人種差別的な面が見えもする。それでも、力強いストーリーは、この映画をとことんまで支えている。
(ビデオ紹介)
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