D・W・グリフィスの作品 1909年(4)

「THE REDMAN'S VIEW(インディアンの考え)」

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。

 バイオグラフ社時代(1908〜1913年)のグリフィスは400本以上の作品を製作している。その中には西部劇も多くあるという。西部劇、特に古典的な西部劇においてインディアン(現在の呼称はネイティブ・アメリカン)は、悪役であった。だが、古典中の古典であるグリフィスの西部劇であるこの作品のインディアンは決して悪役ではない。むしろ、白人によって土地を追い立てられた者たちの哀愁が漂う作品となっている。

 白人たちに土地を追われるインディアンたち。恋人を白人に奪われるが、病気の父親の面倒を見なければならないために何も出来ない青年のインディアン。新しい土地を求める旅は青年の父を死に追いやる。父を失った青年は、白人に奪われた恋人を取り戻しに行き、白人の好意によって解放される。

 恋人を奪いに来た青年に対して、恋人を解放してやる「いい白人」がいるとはいえ、おおむね映画は白人を残酷な侵略者として描き、インディアンを迫害される人々として描いている。それはまるで、後の古典的な西部劇とは逆の描き方だ。

 インディアンを白人が演じているとか、インディアンの儀式が正しくないとか(正しいのかもしれないが)、そういった表面的な部分ではなく、気持ちの部分でこの映画はインディアンに非常に同情的だ。

 ラスト・シーンには哀愁が漂っている。父親の死体の前に立つ青年と恋人の後姿で映画は終わる。そこには、余計な言葉は要らない(サイレントだから、聞こえる言葉はないのは当然だが)。その「絵」だけで十分に見る者に伝わってくるものがある。

 後に「国民の創生」(1915)によって、人種差別主義者として非難されるグリフィスだが、リリアン・ギッシュは決してそうではないと擁護している(「リリアン・ギッシュ自伝」)。確かに、この作品を見ると、グリフィスが少なくとも「単純な」人種差別主義者とは思えない。「単純な」人種差別主義者が、今とは違いネイティブ・アメリカンの描写には気を使う必要のない時代に、このような哀愁漂う映画を作ることはないだろうから。



(DVD紹介)

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

 バイオグラフ社所属時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。多くが1巻物(約15分)の作品が、全部で22本見ることができる。

注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。