Ｄ・Ｗ・グリフィスの作品 １９１０年（２）

「IN THE BORDER STATES（境界州にて）」

　Ｄ・Ｗ・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。

　南北戦争を背景にしたドラマ。南軍の兵士を助けてあげた少女。自分の父親が窮地に陥ったときに、かつて助けてあげた南軍の兵士によって助けられる。

　１５分という短い時間の中で、濃縮なドラマと、少しませて小生意気な少女の魅力が詰め込まれた作品となっている。グリフィスの監督としての腕前は堅実さを感じさせる。たとえば、一家の父親が出征していくシーンでは行進する兵士たちや父親の家族を画面の手前に配しながら、画面奥には兵士たちを見送る女性たちが見えるというロケならではの奥行きを感じさせる構図となっている。

　何よりもこの作品を特徴づけているのは、ませた少女の描かれ方だろう。敵側である南軍の兵士を助けた後、兵士は少女にお礼のキスをしようとするが、少女は拒否する。その様子は「あなたを助けてあげましたが、敵側であるあなたのキスはお受けできません」と淑女が言っているかのようだ。そして、今度は同じ兵士に父親の命を助けてもらった後、再び兵士は少女に親愛の意味を込めてキスをしようとするが、再び少女は拒否する。その様子は「あなたのご恩には感謝いたしますが、敵側であるあなたのキスはお受けできません」と淑女が言っているかのようだ。しかし、今回は代わりに握手をし、互いに敬礼をして別れる。

　少女には個性があり、その個性がこの映画を活気付けている。１５分という短い時間の中で、少女に個性を与えることによって、グリフィスは映画の魅力を一段増している。

（ＤＶＤ紹介）

Dw Griffith: Years of Discovery 1909-1913 [DVD] [Import]

　バイオグラフ社所属時代のＤ･Ｗ･グリフィスの作品を集めた２枚組ＤＶＤ。多くが１巻物（約１５分）の作品が、全部で２２本見ることができる。

注意！・・・「リージョン１」のＤＶＤです。「リージョン１」対応のプレイヤーが必要です。