D・W・グリフィスの作品 1910年(3)

「THE USURER(高利貸し)」

 D・W・グリフィス監督作品。バイオグラフ社製作。

 裕福な金貸しと、金貸しに取り立てに合う貧しい人々の様子を描いた社会派の作品。

 比較的短い間隔で、金持ちのパーティや貧しい人々の苦しい生活が対比され、ただそれを見るだけで胸にくるものがある。とはいえ、手法としては取り立てて優れているわけではない。

 同系統の作品である「CORNER IN WHEAT(小麦の買占め)」(1909)と比較すると、「CORNER IN WHEAT(小麦の買占め)」は小麦農家に小麦を使ったパンを待ち焦がれる人々、そして小麦を買い占める小麦王と対象が広く、小麦王の無残な死が何の解決ももたらしていないことが暗に示されて終わる。対して、この作品は金貸しと取り立てる人々と関係が非常に単純であり、金貸しが金庫に閉じ込められて死ぬという「CORNER IN WHEAT(小麦の買占め)」と似たような展開をたどるものの、死んだ金貸しの妹が貧しい人々に取り立てた家具などを返すというハッピーエンドになっており、「CORNER IN WHEAT(小麦の買占め)」の絶妙な寂寥感を感じさせるラストのような味わいはない。途中で、借金を苦に自殺をした人物も描かれていることからも、無邪気なラストには空々しささえ感じる。

 それでもなお、この作品には胸を打つものがある。その理由は、グリフィスが貧しい人たちの側に立っていることと、グリフィスの貧しさを引き立たせる演出によるものだろう。借金の片にベッドが取り立てられるシーンがある。そのベッドには病気の少女が寝ている。しかし、取立人は容赦なくベッドを空けるように要求する。母親は仕方なく、病気の娘をゆっくりとイスへと動かす。このときのゆっくりとした間が素晴らしい。力なく動かされる少女の脇では、取立人たちがそちらを見ないようにしているようにじっと立っている。そこには何の言葉もないが、貧しい人たちの境遇の厳しさと、取立人たちの良心の呵責といった要素が満ち満ちている。

 特に編集の技法が取り上げられやすいグリフィスだが、このシーンのような1つのシーンの中での間や構図といった面での素晴らしさが映画を魅力的なものにしている点は見逃してはならないだろう。



(DVD紹介)

「Biograph Shorts 」

 バイオグラフ社監督時代のD・W・グリフィスの作品を集めた2枚組DVD。ほぼ15分程度の短編が、全23作品収められている。デビュー作「ドリーの冒険」も収録。

 アメリカのamazonから輸入して買うことができるが、もちろん英語。それでも買いたいと思う人は、下記サイトが参考になります。

http://dvd.or.tv/


注意!・・・amazonでは「リージョン1」となっていますが、私が持っている日本国内用の「リージョン2」のプレーヤーでも再生できました。リージョンは「オール」と思われますが、実際に購入して見られなくても責任は負いません。