フランス ゴーモン社の作品 1910年

「CADRES FLEURIS」(1910)

 製作国フランス 英語題「FLORAL FRAMEWORKS」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 額縁のように花のような模様がアニメーションで描かれていき、完成すると真ん中に人物の顔などが映し出される。絶対映画的な作品で、幻想的な雰囲気を持っている。


「LE BINETOSCOPE」(1910)

 製作国フランス 英語題「THE SMILE-O-SCOPE」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 次々と様々な人間や顔に変わっていくアニメーション。アルファベットが顔になったり、顔を横にいくつかに分けて、それぞれが変化することで顔が変わっていくなど、当時映画以外でも遊びで行われていたであろう要素が取り込まれているのが特徴的だ。


「REVES ENFANTINS」(1910)

 製作国フランス 英語題「CHILDISH DREAMS」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール 出演アルフォンジン・メアリー

 少女が見た夢は、様々な物体が現れては姿を変える不思議なものだった。

 切り絵を使った幻想的な作品。当時コールは、単純な線画によるアニメーションだけではなく、様々な技術に挑んでいたことが分かる。


「EN ROUTE」(1910)

 製作国フランス
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 歩き疲れた昔の男。だが、馬が走り、船が航行する現代は、男のように疲れることはない。

 切り絵を使用したアニメーション。馬や船などが細部まで表現されているのは、切り絵ならではだろう。ラストは、様々な乗り物が飛び交う地球が映し出されるが、最後にはすべてが動きを止めてしまう。どこか文明批判的でもあり、どこか不気味さも感じさせる。


「LE SONGE DU GARCON DE CAFE」(1910)

 製作国フランス 英語題「THE MIND OF THE CAFE WAITER」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 カフェの店員が寝てしまい、アルコールが人体に害悪を及ぼす夢を見る。

 アルコールが人体に害悪を与えることは、具体的にではなく、「WINE」といった文字が悪魔のように変化し、人間に入り込むと爆発するといった具合に象徴的に描かれている。当時アルコールの害は社会問題となっており、それを取り上げたのだろう。だが、ラストの楽しさを見ると、題材として取り上げただけで、コールが真剣にアルコールに反対しているのではないのかも知れない。

 この作品でも、切り絵が使われている。切り絵は線画と組み合わされて使用されており、当時のコールの技法が様々な技法を盛り込んで変化しているのが分かる。


「CHAMPION DE PUZZLE」(1910)

 製作国フランス 英語題「MASTER OF A FASHIONABLE GAME」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 ある男がジグソーパズルに手をかざすと、離れ離れのピースがつながっていく。

 ストップモーションを使用しているように見えるが、アニメーションのような動きを見せる部分もある。徐々に形ができていくというジグソーパズルの持つ楽しさも持ち込んだ作品だ。

 コールの作品を見ていると、実写だろうが、線画だろうが、ストップモーションだろうが、映画ならではのものだろうが、既存の娯楽であろうが、ありとあらゆるものを貪欲に取り込み、エンタテインメント性を打ち出そうとするコールの自由な姿勢が見て取れる。


「LE PETIT CHANTECLER」(1910)

 製作国フランス 英語題「PETIT CHANTECLER」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 ニワトリたちの世界での出来事を、剥製(?)を使用したストップモーションでみせる。

 これまでのコールの作品にはない、物語を紡ごうという意思を感じる作品。剥製の位置を動かしただけの動きでは細かい機微まで伝わってこず、成功しているとは言えないかも知れないが、コールの映画作りへの視野の広さを感じさせる。


「LES DOUZE TRAVAUX D'HERCULE」(1910)

 製作国フランス 英語題「THE TWELVE LABORS OF HERCULES」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 ギリシア神話の英雄ヘラクレスが行ったとされる12の功業を描く。

 切り絵アニメーションで描かれた作品。12に分かれた戦いのシーンを連続で描いているに過ぎないのだが、多くの人が知っている知識を利用して、物語として受け入れられるようになっている。物語を紡ごうとするようになったコールの意思が感じられる作品だ。

 切り絵を活用するようになったのは、なるべく手間を省こうという事かもしれないが、妙におっさんっぽいヘラクレスのリアルな描写などは、当時の技術では切り絵じゃないと生み出せないものだろう。


「LE TOUT PETIT FAUST」(1910)

 製作国フランス 英語題「PETIT FAUST」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 ゲーテファウストの人形を使ったストップモーション・アニメ。人形劇を撮影したようなスタイルは、工夫が足りないようにも感じられるが、ここにもコールの物語を語ろうという意思が感じられる。


「LE PEINTRE NEO-IMPRESSIONNISTE」(1910)

 製作国フランス 英語題「THE NEO-IMPRESSIONIST PAINTER
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 画家のところに絵を買いに来た男は、絵がどれもメチャクチャなので怒り出す。

 絵を見せるとアニメーションに変わるという展開の作品。以前のコールの作品であれば、抽象的なアニメーションとなるところだが、この作品では絵の中でちょっとしたストーリーが語られるのが、ストーリーのある作品を作り始めていたコールの当時の状況と通じるものがある。


「LES QUATRE PETITS TAILLEURS」(1910)

 製作国フランス 英語題「THE FOUR LITTLE TAILORS」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 4人の仕立屋が、美しい娘の歓心を得ようと、縫い物の技術を披露する。

 4人のうち3人が、自動的に針が動いたり、糸だけで塗ったり、昆虫の羽根を縫ったりとトリッキーな縫い方をする中、普通に縫い方をした仕立て屋が選ばれる。トリッキーな縫い方をするシーンでは、ストップモーションの技術が使われている。



「L'ENFANCE DE L'ART」(1910)

 製作国フランス 英語題「ART'S INFANCY」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 切り絵アニメーションで表現された恐竜と人間の小話や、拳に色を塗って表現した人間の顔など、アニメーションや実写の技術を使って、様々なちょっとした不思議な映像を見せてくれるといった印象の作品。絶対映画に似た要素も持っている。



「LE PLACIER EST TENACE」(1910)

 製作国フランス 英語題「THE PERSISTENT SALESMAN」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 1人の男と、男をしつこく追うセールスマンは、インディアンと思われる男で食べられてしまう。

 ほとんどの部分が実写で、セールスマンにしつこく追われるというシチュエーションは、ありがちと言えばありがち。この作品が少し違うのは、インディアンと思われる男に食べられた2人が胃の中で出会う様子が、切り絵を使ったアニメーションで描かれているところだろう。ちょっとしたアクセントだが、同時期の作品にはない茶目っ気を感じる。ステレオタイプなインディアンへの描き方は別として。



「HISTOIRE DE CHAPEAUX」(1910)

 製作国フランス 英語題「A HISTORY OF HATS」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 1800年からの帽子の変遷や、トップ・ハットを被る男にまつわる冗談を交えた小話など、帽子にかんするよしなし事をアニメーションで表現した作品。1つのものをモチーフにした映像のアラカルト。幼児向けの教育番組のコーナーの1つのようだ。

 この頃のコールの作品には、切り絵をストップモーションの技術で動かした作品が多い。かなりの本数の作品を製作していることからみても、時間の節約のためと思われる。1枚1枚を手書きで描くタイプのアニメーションは非常に時間がかかるのだ。そのことは、「GERTIE THE DINOSAUR」(1914)の映画内で、ウィンザー・マッケイも説明しているとおりだ。



「RIEN N'EST IMPOSSIBLE A L'HOMME」(1910)

 製作国フランス 英語題「NOTHING IS IMPOSSIBLE FOR MAN」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 映画だから見られる世界、アニメだから見られる世界を映像化した作品。タイトルから想像するに、そうした内容の作品と思われるが、真上から街を撮影した実写と、シャレの効いたアニメと・・・といった感じ。思えば、コールの作品はみんな映画だから、アニメだから見られる世界なのだ。



「MONSIEUR DE CRAC」(1910)

 製作国フランス 英語題「MR. CRACK」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督エミール・コール

 ミュンヒハウゼン男爵が語ったものが原型とされる「ほら吹き男爵の冒険」からヒントを得て作られたアニメーション作品。体がバラバラになったり、イタリアの活火山であるエトナ山の火口に入ったりといった奇想天外な内容となっている。

 アニメと相性は抜群で、妙にゆるい造形の男爵といい、ほら話にふさわしい軽やかな楽しさを持った作品だ。



「LES CHIEFS-D'OEVRE DE BEBE」(1910)

 製作国フランス 英語題「BEBE'S MASTERPIECE」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督・作画エミール・コール 製作レオン・ゴーモン 出演ルネ・ダリー

 大人の画家のような身のこなしをする少年は、各国の政治家たちの顔を描いてみせる。

 政治家たちの顔が次々とアニメーションで描かれていくのは、他のコールの作品でもありがちなものだ。実写を組み合わせているものの、過去の作品の焼き直しのような印象を受けてしまった。



「LES CHIEFS-D'OEVRE DE BEBE」(1910)

 製作国フランス 英語題「BEBE'S MASTERPIECE」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督・作画エミール・コール

 エミール・コールがゴーモン社で製作した最後の作品。音楽をモチーフに、音楽家のイラストが登場したり、ちょっとした実写のコントがあったり、(初心に戻ったような)音楽にまつわる様々な物体に姿を変えるアニメーションがあったりと、コールがここまで辿ってきた軌跡を感じさせる作品となっている。



「LE BAPTEME DE CALINO」(1910)

 製作国フランス 英語題「CALINO'S BAPTISM」
 Societe; des Etablissements L. Gaumont製作
 監督ジャン・デュラン 出演Clément Mégé、ガストン・モド

 ジャン・デュランがゴーモン社で製作した喜劇「カリノ」シリーズの1つ。

 洗礼式にやってきたカリノだが、大人たちが目を話した隙に自転車に乗って逃げ出してしまう。

 自転車で追いかける大人たちだが、途中で商店に突っ込んで商品が落ちてきたりと、カオスの魅力を持った作品だ。強烈な個性を売り物にした、アメリカのスラップスティック・コメディとは違ったテイストの作品である。