シャルル・パテ 映画産業の父(1)

cinedict2007-02-08


 リュミエール兄弟エジソン、ジョルジュ・メリエスエドウィン・S・ポーターといった映画初期に名を残している巨人たちと比較すると、シャルル・パテ(写真)の影は薄い。だが、パテは映画界に確実に名前を残すに足る人物だ。

 シャルル・パテの映画人生は、映画興行師としてスタートしている。間もなくして、映画制作にも進出していく。パテの映画制作は独創的ではなく、ジョルジュ・メリエスや他の国の作品を剽窃したものだったといわれている。

 1900年代の前半頃まで、映画作品の剽窃は頻繁に行われていた。著作権の認識は低かった。さらに、巡回興行者による映画上映が中心だった当時、実際に剽窃が行われているのかをチェックするのは今以上に困難だった。1本あたりの上映時間が短かった(5分未満)という点も、映画の剽窃を容易にした。ある作品を見て、急いで剽窃し(5分未満の簡単な作品な1日で可能だった)、大量に焼き増しし、元の作品よりも安い金額で興行師に売れば、元の作品よりも売れて利益が上げられるという仕組みだ。

 また、当時はまだ映画は「見世物」としての存在が強かった。現在のように、「語りたい物語がある」とか、「描きたい世界がある」とかいった理由での映画制作よりも、「見世物」としての映画作品を作り出すという必要性があった。そういった作品を作ろうと思ったとき、何をどのように撮影するかを一から考えるよりも、他の人が製作した作品を剽窃した方が、労力を抑えることができたのだった。

 同時期、根っからのエンターテイナーであるジョルジュ・メリエスは、いかに観客を楽しませる映画を作ることができるかについてや、いかにして映画の質を高めるかという問題に取り組んでいた。その一方で、シャルル・パテはメリエスの映画の剽窃を行ったりして、いかにして映画への数的な需要に応えるかという問題に取り組んでいた。



(映画本紹介)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

映画誕生前から1929年前までを12巻にわたって著述された大著。濃密さは他の追随を許さない。