シャルル・パテ 映画産業の父(2)

 パテは映画興行、映画製作の面を抑える一方で、映画機材の生産にも乗り出す。映画にはハードとソフトの面があり、いま「映画を語る」というと大体がソフト(映画作品)についての話になるが、ハード(機材など)の面も重要な側面である。特に、映画初期においては、機材をいかにして入手するかという面は大きな問題だった(エジソン社は、カメラや映写機といった機材の権利を盾に映画界を独占しようと企てた)。

 パテ社においては、単純に映画機材を大量に使用するのだから、他社から購入するよりは自社で開発した方が安上がりに済むという事情もあったことだろう。

 さらには、シャルル・パテはフィルムをレンタル制へと移行することによって、映画上映のシステムを大きく変更している。それまで、映画作品はフィルムの売却によって興行者に渡されていた。売却されたフィルムをどうのように上映するかは興行者の自由だった。ボロボロになっても上映してもいいし、興行者同士で所有している別の作品と交換してもいいし、1コマずつ切っておもちゃ用に販売してもよかった。レンタル制に移行することによって、興行師たちは一定期間を過ぎたフィルムはパテ社に返却する義務が生じることになる。

 このレンタル制は現在の映画上映にも続いているシステムだ。製作会社が製作した映画のフィルムは、配給会社を通して映画館に配給され、上映が終わったフィルムは配給会社へと返されるというシステムになっている。このシステム変更によって、「作りっぱなし」「売りっぱなし」という状態から、流通している映画作品をある程度管理することが可能になった。興行師たちはフィルムを転売することはできないし、古い作品をいつまでも新作として上映することもできなくなった。この変更は、それまでは単なる見世物として消費されていくだけだった映画に「作品」としての役割を担わせる一助となったといえるのではないだろうか。



(映画本紹介)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

映画誕生前から1929年前までを12巻にわたって著述された大著。濃密さは他の追随を許さない。