ニッケル・オデオンが映画にもたらしたもの(2)
ニッケル・オデオンは決して初の映画常設館ではなかったという点も触れておく必要がある。
1902年4月には、ロサンゼルスに映画専門館のエレクトリック・シアターがオープンしている。また、エレクトリック・シアターのオープンの前にも、数は少なかったが映画館は存在していた。
エレクトリック・シアターの料金は10セントと、当時としては若干高めの設定になっていたと言われている。このことは、舞台と比べて安っぽく、寄席のような不道徳的な盛り場で上映されていた映画の「格」を上げることになる。実際、エレクトリック・シアターの客は中流階級が多かったという。映画をもっと見たいけれども、映画を上映している場所が自分たちのような階級には合わないと考えて見にいけなかった人々は、こういった数少ないちょっと高級な映画専門館に足を運んでいた。
ニッケル・オデオンが誕生する前まで、中流階級以上の人々のためには、数は少なかった映画専門館は存在していた。しかし、労働者階級にとっての映画専門館はまだ存在していなかった。
(DVD紹介)
- 作者: 加藤幹郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 新書
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映画がどのようにして観客に受容されてきたかについて書かれた数少ない本。映画は常に映画を見る環境と共に成立し、変化してきたことを教えてくれる。