ニッケル・オデオンが映画にもたらしたもの(4)
ニッケル・オデオンの誕生は、映画が産業として成り立つことを証明して見せた。それは、中流階級のみを相手にすることではなく、労働者階級も含めたより大きなマスを相手にすることで可能となったといえるだろう。実際、ニッケルオデオンはよりいっそう大きなマスを相手にするための努力を怠らなかったようだ。労働者階級の男性だけではなく、女性客を増やすために品の悪い行動を排除しようという努力がなされたという(実際、1910年のニッケルオデオンの観客の40%は女性だったという)。
そして、これが何よりも重要なのではないかと思うのだが、ニッケル・オデオンは映画と人々の距離を縮めたと言えるのではないだろうか?ニッケル・オデオンの誕生により、ニッケル・オデオンに行けば、映画は「いつでも見たいときに安く」、見られるものとなった。ニッケル・オデオンの誕生によって映画体験が体に染み付いた観客たちは、この後も映画の支持者として生きていくことになる。映画はこうして、より大きな産業となっていく下地を作っていくことになる。もちろん、ニッケル・オデオンの経営者たちに巨額の富も与えたのだが。
(DVD紹介)
- 作者: 加藤幹郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 新書
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映画がどのようにして観客に受容されてきたかについて書かれた数少ない本。映画は常に映画を見る環境と共に成立し、変化してきたことを教えてくれる。