ニッケル・オデオンが映画にもたらしたもの(5)
ただ、ここで忘れてはならない点が1つある。ニッケル・オデオンは人々と映画の距離を縮めたが、まだ現在の私たちと映画館の関係とは異なった存在であった。加藤幹郎の「映画館と観客の文化史」はニッケル・オデオンでは映画上映のみならず、ヴォードヴィル劇場の人気演目だったイラストレイティッド・ソング(スライド・ショーに合わせて、歌手と観客が大合唱する)も行われて人気を呼んだ点を指摘している。ニッケル・オデオンは映画と人々の距離を縮めたが、映画が映画のみで人々を満足させるためには、まだいくつかの過程を経ていくことになる。
(DVD紹介)
- 作者: 加藤幹郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 新書
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映画がどのようにして観客に受容されてきたかについて書かれた数少ない本。映画は常に映画を見る環境と共に成立し、変化してきたことを教えてくれる。