日本 日活向島撮影所の建設

前年(1912年)に誕生した日活は、当初吉沢商店の目黒撮影所と、横田商会の京都撮影所をそのまま使用していたが、能率的ではなかったため、新しく東京府南葛飾郡隅田村の日活向島撮影所が建設されている。奥行9間、間口11間で太陽光線で撮影するためのグラス・ステージとして作られた。この撮影所は1923年の関東大震災の被災で閉鎖するまで多くの作品が製作されていくことになる。

 向島撮影所の建設に伴い、目黒撮影所は廃止され、旧吉沢商店の従業員は向島撮影所に移動した。女形の立花貞二郎や衣笠貞之助向島撮影所へと移った。だが、旧福宝堂や旧エム・パテーの従業員は向島撮影所付近で天幕ステージを建てて、撮影を行うなど一枚岩ではなかった。

 撮影所長には山崎勝造が就任したが、経費抑制が第一主義だったため、十把一束的な作品しかできなかった。新しい撮影所でも撮影方法は昔と同じで、舞台の引きうつしで声色セリフ入りの作品が多かった。

 この年、日活が撮影した作品としては牧野省三監督の「八犬伝」「大石蔵之助一代記」や、立花貞二郎主演の「忍び駒」などがある。



(映画本紹介)

日本映画発達史 (1) 活動写真時代 (中公文庫)

日本映画発達史 (1) 活動写真時代 (中公文庫)

日本の映画の歴史を追った大著。日本映画史の一通りの流れを知るにはうってつけ。