日本 沢村四郎五郎

 尾上松之助がスターとして活躍していた一方で、松之助の次に人気を得るスターも1914年頃から映画に出演している。沢村四郎五郎がその人物だ。

 1914年から1924年までに約200本に主演したという沢村四郎五郎は、尾上松之助より美男で粋でいなせだったという。ラブシーンのある作品も演じ、技術的にも松之助の映画より進んでいたと言われている。だが、子供たちにとってラブシーンはいやらしいもので、子供たちは松之助の映画の方を好んだ。

 1910年代の日本映画は子供が観客の主力を占めており、大人はバカバカしい見世物として日本映画を捉えていた。そのために松之助の人気は圧倒的で、沢村四郎五郎が出演する作品も、松之助の作品のような英雄豪傑が悪者をやっつける内容が主となった。また、観客の主体である子供にとって、歌舞伎は内容的に複雑だったため、講談に題材が求められたという。



(映画本紹介)

日本映画発達史 (1) 活動写真時代 (中公文庫)

日本映画発達史 (1) 活動写真時代 (中公文庫)

日本の映画の歴史を追った大著。日本映画史の一通りの流れを知るにはうってつけ。