日本 立花貞二郎と日活向島新派

 人気絶頂だった日活京都の松之助映画に対して、日活向島では新派悲劇を多く製作していた。類型的な題材で、弁士が張り上げる悲しい声色につれて、男役者が扮した女形がぎくしゃくと泣いてみせるところをロングで撮影見せるといったものだった。そんな作品に対して、クロース・アップがないことや女形の不自然さに非難が高まっていた。

 日活向島映画のスターは女形の立花貞二郎だった。立花は、子役として舞台の新派に出演していたが、吉沢商店の目黒撮影所の俳優養成所に参加。その後エム・パテーを経て、日活向島へやってきていた。

 そんな日活向島撮影所にこの年、芝居の世界から田中栄三が向島撮影所にやってきて活躍していくことになる。



(映画本紹介)

日本映画発達史 (1) 活動写真時代 (中公文庫)

日本映画発達史 (1) 活動写真時代 (中公文庫)

日本の映画の歴史を追った大著。日本映画史の一通りの流れを知るにはうってつけ。