日本 松竹キネマ研究所の設立と、松竹キネマの特徴

 何とかスタートを切った松竹キネマだが、小山内薫が校長に就任した俳優学校は6ヶ月で廃止されている。あくまでも芸術的な映画の製作という理想を追求する小山内薫島津保次郎らの弟子たちを、会社側が見限ったのである。小山内らは松竹キネマ研究所と称して、松竹内部の独立プロの形で活動していくことになる。この研究所には、監督として村田実、牛原虚彦島津保次郎が名を連ねた。

 松竹は発足後、演劇関係者から野村芳亭や賀古残夢をスカウトし、新派悲劇を土台とした現代的な家庭劇の味わいも盛り込んだ作品で、商業映画の基礎を作っていく。

 松竹映画の特徴として、女形を廃し、最初から女優を採用した点がある。栗島すみ子は新派悲劇のヒロインを、あでやかで明朗に演じてスターとなったと言われる。女優たちが演じた役柄は、古い封建的な虐げられた女の型にはまっていたが、女性であることの豊かさを感じさせたという。また、色気の点でさっぱりとしていたために人気を得たとも言われている。