日本 大正活映 「アマチュア倶楽部」「葛飾砂子」

 トーマス栗原が監督し、谷崎潤一郎が脚本を担当した作品が、「アマチュア倶楽部」(1920)である。

 「アマチュア倶楽部」はアメリカニズムに溢れた作品であり、技術的にもクロス・カッティングやインサート・ショットを巧みに用いたという。出演者は素人ばかりであったが、そのために栗原の指導通りに動いてくれ、快活さにつながったと言われている。「アマチュア倶楽部」が目指したのは、アメリカのスラップスティック・コメディである。マック・セネットが製作したキーストン社のコメディの日本版を目指し、視覚的なギャグに重点が置かれたという。

 「アマチュア倶楽部」は、後に有名な俳優となる岡田時彦の初出演作品でもある。ロケが岡田の家の付近で行われたため、見学者には近所の人も来ていたという。

 さらに、栗原監督、谷崎脚色「葛飾砂子」(1920)も作られている。泉鏡花の同名小説を映画化した作品で、東京の下町を舞台に、深川娘と若い役者との悲恋を描いている。前作「アマチュア倶楽部」のテンポが速すぎると興行側から抵抗があったため、栗原はカット割りのスピードを落として撮影したと言われる。