ドイツ 表現主義映画の残り火

 「カリガリ博士」で火がついた表現主義的な作品としては、体が麻痺した妻を持つ男性が別の娘を愛し、妻を毒殺しようとする物語である「性の焔」(1921)という作品が公開されている。マックス・ラインハルトの元で育ったフリードリヒ・フェーエルが監督し、テア・フォン・ハルボウが脚本を担当している。

 カール・フレーリッヒ監督の「カラマゾフの兄弟」(1921)も表現主義的な映画だった。ロシアの文豪ドストエフスキーの名作の映画化である「カラマゾフの兄弟」は、貪欲な好色漢で息子たちにも憎まれているフョードルが殺され、放蕩生活にあった長男に嫌疑がかかり・・・といった内容の作品である。

 「カリガリ博士」の脚本を担当したカール・マイヤーは、「カリガリ博士」後も表現主義的な脚本を提供していた。マイヤーが脚本を担当した「偽りの道徳」(1921)は、専横的な老女によって引き離されたある男女が主人公で、男性が別の女性の結婚するときに女性の死体が送られてくるという内容だった。小道具の目覚まし時計が効果的に使われているという。だが、演出は表現主義的ではなかったと言われる。