ドイツの映画製作 1921年

 喜劇の軽妙さと史劇の重厚さを兼ね備えた演出でドイツを代表する監督になっていたエルンスト・ルビッチは、ポーラ・ネグリ主演でエロティシズム溢れる小品コメディ「山猫リュシカ」(1921)を監督している。山の奥に住む山賊の首領の娘リュシカは、一群の女王のように振る舞っていた。リュシカは山の要塞にやってきた中尉に一目ぼれしてしまい・・・という内容の作品だ。

 光と影の卓抜な処理、革新的なキャメラワークが特徴的なF・W・ムルナウは、「フォーゲルエート城」「夜のプロムナード」(1921)を監督している。両作とも「カリガリ博士」(1920)のカール・マイヤーが脚本を担当している。

 「フォールエート城」は、ヘルマン・ワルムのセットやフリッツ・アルノ・ワグナーの撮影に助けられて、現実と幻想が見事に映像化されているという。「夜のプロムナード」は、フランスの映画理論家・映画監督のルイ・デリュックが「すべての点で知的な映画」と評したと言われている。

 デンマーク映画界が生み出したスター女優であるアスタ・ニールセンは、この頃ドイツ映画にも出演していたが、徐々にドイツ俳優としての色が濃くなっていた。この年はスヴェン・ガーデ監督の「ハムレット」(1920)で男装して出演している。

 そのほかにも、ロフス・グリーゼ監督の怪奇劇「影を失へる男」(1921)などが作られている。