ドイツ フリッツ・ラングの「死滅の谷」
フリッツ・ラングは、ヨーエ・マイ・カンパニーからエーリッヒ・ポマーのいるデクラ=ビオスコープ社(ポマーがデクラとビオスコープを併合していたためデクラ社から改名していた)に戻っている。
そこでラングは、ハルボウとの共同脚本の「戦う心」(1921)を監督した後、「不滅の谷」(1921)を監督している。ラングは「不滅の谷」で、監督としての名声を高めている。
「不滅の谷」は、恋人のために死神に挑む女性の物語を3つのエピソードで語った作品である。脚本には後にラングの妻となるテア・フォン・ハルボウを協力者として招いている。セットは「カリガリ博士」(1920)を担当したワルター・レーリッヒとヘルマン・ワルムが担当した。ラングはセットに建築的な構想を与え、全体を垂直と水平の線で統一した。死の世界を取り巻く巨大な壁、ゴシック風の空間に輝く無数のロウソク、ルネッサンス様式のヴェニスなど北方的造形性によってまとめられている。これらには、表現主義的な面が見られる。フリッツ・アルノ・ワグナーの撮影も注目に値する。
死と愛の葛藤が神秘的な幻想の中で語られ、愛は死に導かれて成就するという内容について、岡田晋は「ドイツ映画史」の中で、「すべての点でドイツ的な特質をそなえもっている」と述べている。
また、ラングとハルボウが脚本を書き、ラングが監督も望んだがヨーエ・マイに却下されていた「さまよえる彫像」(1921)が、マイ監督で映画化されている。
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