日活の映画製作 1923年

 根岸耕一が所長に就任した日活向島撮影所では、松竹蒲田のシステムを真似て、監督によるユニット制度を採用した。田中栄三組、鈴木謙作組、若山治組、溝口健二組、細山喜代松組、大洞元吾組といったユニットが作られたという。また、脚本部も充実させた。

 その他に日活では、「白痴の娘」「故郷」「髑髏の舞」「忘れな草」「三つの魂」「愛慾の悩み」「三人妻」「人間苦」「受難者の群」「血の洗礼」「地獄の舞踏」「毒塵」「夜」「山の悲劇」といった作品や、震災を扱った「大地は揺ぐ」「その日の心」が作られている。

 田中栄三監督の「髑髏の舞」は、修行中の若い僧と町娘と2人を邪魔する妖婦の愛憎ドラマである。日活が舞台の新派から現代劇へ転換した最初の作品と言われる。日活映画改革を試みていた田中栄三の新たな挑戦で、興行的にも大ヒットした。女形の大量離脱により、新劇の舞台協会と提携した第一作であり、岡田嘉子や山田隆弥といった劇団員が出演しており、特に岡田の好演が目立ったという。

 「三人妻」は、尾崎紅葉の愛欲小説を田中栄三自らが脚本化し、三人三様の女の生き方を巧みに描いた。3人の愛人を持っている富豪。女たちは富豪の寵愛を独占しようと競い合い・・・という内容の作品である。