松竹 「船頭小唄」のヒットと栗島すみ子の人気

 松竹が製作した大ヒット作に池田義信監督「船頭小唄」(1923)がある。

 監督の池田義臣は、会社から正月用の中編ものを至急作れと言われて、わら半紙数枚の筋書きを伊藤大輔からもらい、数人のスタッフと俳優を引き連れて夜行列車に飛び乗った。撮影後急いで帰京し、セット撮影と合わせて5日間で完成させたという。

 正月作品の添え物にもかかわらず、人気絶頂の栗島すみ子が主演したことや、野口雨情作詞の流行歌の挿入により、思わぬヒットを収めたのだった。「船頭小唄」のヒットにより、以後「小唄映画」と呼ばれる小唄を元にした作品が多く作られるようになったという。

 「船頭小唄」に主演した栗島すみ子は、すでに人気スターだった。栗島は、どんな作品でも興行的に成功させ、人気を示し続けた。この年は、他にも牛原虚彦監督「嗚無情」(1923)で井上正夫と共演した。ヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」の映画化作である。