マキノ映画製作所の映画製作

 二川文太郎がこの年から監督として活躍を始めている。マキノの教育映画にカット・バックを入れたり、タイトルによる省略を行ったりして見事に再編集したことがあり、その手腕を牧野省三に買われたのだった。

 他にもマキノでは「二羽の小鳥」「弥次と北八」「彼の山越えて」「青春の悲歌」「生首の薄化粧」「火の車お萬」「咽び泣く魂」といった作品が作られている。作品は、伝統に縛られることなく、スタッフは伸び伸びと働き、ファンの評判も良かったという。雑誌や新聞の小説に登場した大衆文学が、これまでの型にはまった説話ではない、人間味のある描写で人気を呼んでおり、マキノ映画もその流れと合致していたと言われる。

 マキノ映画は全国のいかなる系統の映画館でも自由に配給することとした。その結果、日活や松竹の配給館は使えなかったが、大活、国活、外国映画専門館に配給を行った。また、関東大震災後には松竹・日活の東京の撮影所機能が麻痺したことが、マキノ映画の更なる進出を促したという。