日活 尾上松之助の1000本記念映画「荒木又右衛門」 1925年

 時代劇が変わっていく中、日本映画草創期の大スターである尾上松之助の作品を変化を求められていた。前田曙山原作「落花の舞」(1925)、大仏次郎鞍馬天狗」(1925)などの文芸作品を原作とした作品に出演するも、演技スタイルの古さは変わらなかったという。

 そんな中、松之助出演の「渡し守と武士」(1924)でデビューし、リアリスティックな剣劇を求めた監督の池田富保が、オールスターキャストで、2時間半の大作「荒木又右衛門」(1925)を企画・脚本・演出した。松之助映画主演1000本記念映画として製作された「荒木又右衛門」は、それまでの松之助の作品と比べて、松之助の役柄に人間味を与え、映画的な作品となったが、日活の重役たちにはいい顔をされなかったという。だが、試写も好評で、金粉入り障子大くらいの大ポスターを作るなどの大宣伝を行い、上映館には特料と称して最低千円のプレミアム料金を徴収した結果、ヒットを記録した。プレミアム制を最初に導入した作品とも言われる。

 他の監督は今までどおりの日活時代劇を作ったが、池田は女形を廃して女優を使うなど、革新的な映画劇を作ったと言われる。池田の革新が日活時代劇全体に及ぶのには1年半くらいかかったという。「荒木又右衛門」の他にも池田は、「フラフラ豪傑」「落花の舞」(1925)などを監督している。