時代劇の新傾向 幕末チャンバラ映画ブーム

 1926年から幕末の勤皇佐幕抗争を描いたチャンバラ映画ブームが起こっている。1926年には「尊王」「幕末」「乱闘の港」が阪東妻三郎プロで、「義に鳴る虎徹」「月形半平太」「修羅王」が日活で作られている。流行は太平洋戦争敗戦まで続き、坂本竜馬月形半平太鞍馬天狗新撰組などが偶像的存在として描かれたという。

 「月形半平太」のラストは、新撰組に追い詰められ斬られまくった後に、血で寺の壁に「死して護国の鬼となる」と書きなぐるというものだったという。

 佐藤忠男(講座日本映画2)によると、これは太平洋戦争の特攻隊に通じるものであり、「雇主や大名や徳川幕府に対する封建的忠誠心がこの頃になってようやく大衆文化から清算されたかわり、それらは天皇と国家への忠誠という、近代ナショナリズムに統合され、置き換えられたのである」であるという。

無声映画の完成 〜講座日本映画 (2)

無声映画の完成 〜講座日本映画 (2)