日活 大河内伝次郎の魅力

 大河内傳次郎は、走る演技、転ぶ演技、立ち回りに、勢いや弾みや重量感があった。その演技を佐藤忠男は「講座日本映画2 映像表現の確立」の中で次のように書いている。

「昭和初期の不況時代における大河内傳次郎のすごい人気は、こういう、のたうちまわる怪獣のようなデモーニッシュな破壊力にそのひとつの基礎をおいていると思われる」

 それまで大河内を認めていなかった日活幹部も、「忠次旅日記」以降は、大河内を尾上松之助の後継者として認めるようになったという。

 大河内は「忠次旅日記」三部作以外にも、幕末を舞台に尊皇派と開国派が熾烈な戦いを繰り広げる池田富保監督作「尊王攘夷」(1927)などに主演している。「尊王攘夷」は、日活の新旧オールスターキャストを集めて製作された時代劇大作で、黒船の来航から、井伊直弼大老就任、安政の大獄井伊直弼の暗殺までが描かれた。

無声映画の完成 〜講座日本映画 (2)

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