日活 「椿姫」と岡田嘉子の駆け落ち

 日活では、森岩雄がデュマ・フィスの原作を翻案して、村田実が監督した「椿姫」(1927)が作られている。森は小説をそのまま映画にすることを好まなかったため、原作とはまったく異なる内容となった。

 「椿姫」は岡田嘉子主演で撮影が開始されたが、撮影中に相手役の竹内良一と駆け落ちして日活を解雇されたため、夏川静江主演に変わっている。

 駆け落ちの理由は、岡田が村田実の演技指導に反発したとも、岡田の私生活の疲れとも言われたが真相は不明だ。森は、岡田が出ないなら脚本を引っ込めるといったが、結局は夏川静江主演でシナリオを書き直し、配役を変更して製作されたが、不本意な結果に終わったという。だが、皮肉なことに、スキャンダルが話題を呼び、映画はヒットした。

 この後、岡田と竹内は、1932年に松竹で映画復帰するまで5年にわたり一座を結成して各地を巡演したが、しばしば観客に野次られたという。