松竹 喜劇専門監督 斎藤寅次郎の活躍

 蒲田撮影所長の城戸四郎は、現代劇と時代劇の二本立てに短編喜劇を加えて、二本半の番組を組んだ。ここで上映される短編喜劇は新人の腕試しにも使われたという。前年監督デビューした斎藤寅次郎は、短編喜劇から出発して、スラップスティック喜劇専門家となり、活躍した。この年は、清水宏と共同監督で、渡辺篤が主演した「不景気征伐」(1927)などを監督している。

 「不景気征伐」は、2人の失業者が空腹を抱えて街をうろつくうち、もとの社長に出会い、から元気と妙計で取り入り・・・という内容の作品である。

 斎藤の作品は、即興で作られる部分が多かったという。斎藤のロケ隊は、監督がどんな小道具の要求をするか分からないため、何でもかんでもトラックに載せて出かけたという伝説もあるくらいである。

 その斎藤の作品の特質について、佐藤忠男は「講座日本映画2 映像表現の確立」の中で次のように書いている。

 「斎藤寅次郎スラップスティック喜劇に一貫していたのも、なりふりかまわぬ弱者の必死の生き方からかもし出される途方もない滑稽さであった」

無声映画の完成 〜講座日本映画 (2)

無声映画の完成 〜講座日本映画 (2)