トーキーへの道 皆川芳造の昭和キネマ

 1927年は、アメリカでトーキー第1作「ジャズ・シンガー」(1927)が作られた年でもある。この年日本では、それに呼応するように、海外視察を行った皆川芳造が昭和キネマ株式会社を設立して、フォノフィルムによる日本トーキー製作に着手している。

 昭和キネマは、7本の短編と「黎明」(1927)を製作した。「黎明」は、バイオリンの名手である作曲家を中心にした恋愛模様を描いた作品だった。新劇の舞台のセリフをそのままに再現したもので、トーキーの物珍しさに応えただけのものだった。発声設備を装備した映画館はまだなく、興行にあたっては発声映写機を携行した、臨時上映の形で行った。