日本 吉沢商店の映画製作

 また、吉沢商店は菊地幽芳原作の「己が罪」を映画化している。この作品は原作のサワリを撮影したものだが、神奈川県の片瀬および江ノ島でロケ撮影が行われている。初のロケを行った日本映画とも言われている。カメラマンは千葉吉蔵が努めたが、演出については素人の千葉の演出は据え置きのカメラで芝居を撮影したものだった。

 さらに、吉沢商店では現像所の設備が整い、二重露出や逆回しができるカメラが手に入り、新派の人気俳優が出演するようになった。「松の緑」(1908)では、実景を取り入れたり、二重露出を使用したりといった努力が見られた。だが一方で、映画の撮影はカメラマンが行っており、演出上の初歩的なミスも多々あった。輸入される外国映画とも比較され、映画専門の「演出家」を必要とする声が高まってきた。




(映画本紹介)
魔術師メリエス―映画の世紀を開いたわが祖父の生涯

 ジョルジュ・メリエスの孫であるマドリーヌ=マルテット・メリエスによるジョルジュ・メリエスの評伝。メリエスの映画製作はもとより、妻や愛人の関係や映画製作を行わなくなってからのメリエスの様子などが描かれている。
 映画製作を行わなくなった後のメリエスが、世間的に言われるほど不幸ではなかったことがわかる。
 身内が書いているので、メリエスびいきになっているのを考慮に入れて読む必要がある。