日本 尾上松之助の活躍−1910年

 尾上松之助映画を製作していた横田商会はこの年、京都に敷地約300坪の撮影所を建設している。撮影所といっても、二間に四間くらいの板敷きの舞台を作り、その上に開閉できる天幕を張り、自然光を使って撮影が行われた。撮影所の土地は元々京都の侠客・千本組初代親分の所有地だったものを、牧野省三が頼んで借りたという。

 この撮影所での第1作として尾上松之助の「忠臣蔵五段目」(1910)が製作されている。この忠臣蔵は1部分ではなく、全通しで撮影され、上映時間は1時間10分という短編中心の当時としては大作だった。この撮影の際には、15人の行列を何度もグルグル回らせて長い大名行列に見立てていたという話もある。また、松之助は大石内蔵助だけではなく、浅野匠頭など他の登場人物も演じており、観客は喜んだという。ちなみにこの作品は、現存する最古の松之助映画といわれている。

 松之助は他にも「石山軍記」(1910)といった作品でもトレードマークの目玉をむいた演技を見せている。



(映画本紹介)

映画初期の歴史のみならず、様々な人物によって書かれることによって、様々な角度から見た映画初期の様子を知ることが出来る1冊。