映画評「世紀の対決」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]アメリカ  [原題]THE BATTLE OF THE CENTURY  [製作]ハル・ローチ・ステュディオズ  [配給]MGM

[監督]クライド・ブラックマン  [製作・脚本]ハル・ローチ

[出演]スタン・ローレル、オリヴァー・ハーディ

 ボクサーのローレルと、マネージャーのハーディ。ローレルは強敵と戦い、あっさり負ける。損を取り返そうハーディはローレルに保険をかけ、怪我をさせようとして、バナナの皮を地面に置く。だが、パイ業者の男がバナナの皮を踏んでパイだらけになったことから、街全体を巻き込んだパイ合戦に展開する。

 街全体を巻き込んだパイ合戦が楽しい。この作品のために3千のパイが用意されたというから尋常ではない。ローレルとハーディの手を離れて、淑女、郵便配達員、理髪店ですっきりしたばかりの男などなど、大勢があちこちでパイ投げ合戦を始める。遠景までパイだらけになったシーンの描写など、演出の力も光る。監督のブラックマンは、バスター・キートンの長編の脚本を担当し、「キートン将軍」(1927)では監督も務めた人物だ。コメディは得意分野だったことだろう。

 前半のボクシングのシーンは、1926年に行われたジャック・デンプシージーン・タニーのボクシングヘビー級タイトルマッチのパロディもあるらしい。デンプシーはダウンを奪うが、ニュートラルコーナーに行かなかったためにカウントを止められ、勝ちを逃している。

 「世紀の対決」は、特に後半のパイ投げシーンに見られるように、非常に演出の力を感じる作品だ。3分の2程度が失われてしまっているのが残念である。