エジソン社の作品　１８９６年（１）

　１８９６年になると、覗き見式のキネトスコープの人気は落ち、上映式のヴァイタスコープを世に放つ。この時期は、覗き見タイプから上映タイプへの移行期でもあり、「メイ・アーウィンとジョン・C・ライスの接吻」を巡る出来事のような移行期ならではの出来事も起こっている。

「AMY MULLER」（１８９６）

　ドレスを着た女性が踊る姿を撮影。

「メイ・アーウィンとジョン・C・ライスの接吻(THE JOHN RICE-MAY IRWIN KISS)」（１８９６）

　中年の男女が寄り添い、キスをする様子を撮影。
　当時人気を得ていた芝居の１シーンを再現したものだという。初めてキスシーンを収めた映画とも言われている。わざわざキスシーンのみピックアップしたのは、観客を呼ぶのにふさわしい見世物としての価値をキスに見出したのだろう。当初は、キネトスコープの作品として興行されたが、映写式のヴァイタスコープで上映されたときは、生々しさがまして顰蹙を買い、初めて検閲により上映中止になった映画とも言われている。今から見ると、もちろんたいしたものではないのだが。
　検閲をめぐる騒動は、今も昔も内容は違えども同じことが繰り返されていることの証左でもある。

「SHOOTING THE CHUTES」（１８９６）

　遊園地（コニー・アイランド）の乗り物の１つである高い所からの急流滑りを撮影。
　ロケ撮影されている。この頃から、エジソン社はロケ撮影を始め、リュミエール社のような街並みなどを撮影するようになったという。

（ＤＶＤ紹介）