レックス社 ロイス・ウェーバー監督作 1913年(1)

「SUSPENSE」

 最初に長編劇映画を監督した女性監督とされるロイス・ウェーバー監督作。レックス社製作、ユニヴァーサル配給。

 家に子供といる母親。そこに浮浪者がやってきて家に入ってくる。仕事中の夫に電話をするも、途中で浮浪者によって電話線を切られてしまう。車で家に急行する夫、少しずつ家の奥へとやってくる浮浪者、果たして間に合うのか?

 というD・W・グリフィスの作品でもおなじみの設定でストーリー自体に新鮮味はない。だが、演出方法に新鮮さがある。

 最も特徴的なのは、画面を分割して、母親と夫と浮浪者の行動を同時に見せるという手法が使われている点だ。この方法は、すでにデンマークでは使われたことがあるらしいが、まだまだ一般化されておらず、新鮮だったことと思われる。グリフィス流のショットを編集でつないでサスペンスを生み出す手法とは異なったサスペンス感が生み出されている。

 ショットの内容にも工夫が凝らされている。たとえば、窓から下の様子を眺める母親のショットに続いてつながれているのは、ゆっくりと上を向く浮浪者のクロース・アップのショットだ。このショットの不気味さは、グリフィスの映画にはない。ドアを破って浮浪者が入ってくるシーンでも、その様子がじっくりとワン・ショットで撮影され、不気味さを強調することに成功している。

 正直言って、似たようなタイプのグリフィス作品と比べるとこちらの方がサスペンスに満ち溢れているように感じられる。もちろん、グリフィスが発展させたクロス・カッティングの手法をさらに発展させているという点で、グリフィスの力には負っているのだが。

 この作品とD・W・グリフィスの同系統の作品(「UNSEEN ENEMY」1912など)と見比べてみると、映画の話法がバラエティに富んでいるということがわかるというものだ。



(DVD紹介)

「Unseen Cinema - Early American Avant Garde Film 1894-1941」

 初期のアメリカ映画を多く見ることができる7枚組みのDVD。日本ではなかなか見ることができない作品を見ることができる。
 アメリカのamazonから輸入して買うことができるが、もちろん英語。それでも買いたいと思う人は、下記サイトが参考になります。

http://dvd.or.tv/
 
注意!・・・「リージョン1」のDVDです。「リージョン1」対応のプレイヤーが必要です。