エドウィン・S・ポーターの活躍

この年、エジソン社に所属していたエドウィン・S・ポーターは「アメリカ消防夫の生活」と「大列車強盗」「アンクル・トムの小屋」という3本の作品を監督している。

ポーターは1900年頃にエジソン社に入社した人物で、映写技師などを務めた後に監督を努めるようになった。

アメリカ消防夫の生活」は1901年にイギリスのジェームズ・ウィリアムソンが監督した「火事だ!」から影響を受けた作品である。クロースアップやショットを割った編集などが行われている。

大列車強盗」は、列車を襲った一味が銃撃戦の末に倒される物語を映画化。各シーンはメリエスの映画のように1ショットで処理されているが、ロケとセットを組み合わせた速い場面展開やスリリングな展開が斬新だった。また、初めての西部劇とも言われているが、実際にはバイオグラフ社が先に西部劇を製作していた。初めての「ヒットした」西部劇という言い方の方が正しいのかもしれない。

大列車強盗」が有名な理由の一つは、強盗がカメラに向かって発砲するというストーリーとは無関係のショットの存在だろう。映画の始めに挿入しても、終わりに挿入してもいいという指示があったというこのショットは、見世物と物語の狭間にあった当時の映画作品の状況を私たちに教えてくれるという点で貴重だ。

「アンクル・トムの小屋」は、有名なお話を映画化したもの。技術的にはメリエスの作品のように舞台を撮影したような形式になっており、「大列車強盗」で見せたセットとロケの組み合わせの魅力はない。この作品の意義は、撮影技法よりも題材の選択の方にあるとされている。「大列車強盗」が西部開拓時代を経験したアメリカならではの題材であるとしたら、この作品もまたアメリカならではの題材であるといえる。映画が各国で文化として根付いていく可能性を、この映画は示している。