映画評「生恋死恋」

 原題「BERG-EJVIND OCH HANS HUSTRU(THE OUTLAW AND HIS WISE)」
 製作国スウェーデン スヴェンスカ社製作
 監督・脚本・出演ヴィクトル・シェーストレーム 製作チャールズ・マグヌッソン

 18世紀末のアイスランド。大地主の未亡人のところに、1人の男がやって来て、2人は恋に落ちる。男はかつて、家族を飢えから救うために羊を盗み捕らえられていたが、脱走したのだった。そのことがバレた男と妻は、山へ逃げて、隠遁生活を送ることにした。

 「生恋死恋」は、当時非常に高く評価された作品である。ストーリーは単純なメロドラマといってしまっていいだろう。だが、極端なまでに「愛こそすべて」が強調された内容は、並のメロドラマとは覚悟が違うといってもいいくらいの熱さを持っている。

 「寒さ」が「生恋死恋」のキーワードでもある。主人公の男が盗みを働いた理由も寒さからくる飢えによるものだし、隠遁生活を送る2人は寒さと飢えに苦しめられる。だが、2人を包み込み、まるでそのまま彫像になってしまったかのように美しく迎えるラストもまた、寒さによるものである。

 高く評価された理由は他にも、自然の情景をうまくつかった点が挙げられている。ロケを多用し、山岳地方の情景がリアルに映し出されているのは確かだろう。

 一方で、内容のあまりにもメロドラマ的な部分が、「生恋死恋」の本質であるように感じられる。シェーストレームは後にハリウッドに招かれるが、「生恋死恋」を見る限り、ハリウッド式のメロドラマもきっちりと撮ってくれそうな気がしてくる。