映画評「法に泣く女」

製作国アメリカ 原題「WITHIN THE LAW」
ジョセフ・M・シェンク・プロダクションズ製作 アソシエイテッド・ファースト・ナショナル・ピクチャーズ配給

監督フランク・ロイド 製作・出演ノーマ・タルマッジ 原作ベイヤード・ヴェイラー 脚本フランセス・マリオン

出演ルー・コディ、ジャック・マルホール、アイリーン・パーシー、ジョセフ・キルゴア

 デパートに勤めていたメアリーは、店の品を盗んだ濡れ衣を着せられ刑務所に入れられる。裁判所の裁定を覆して自分を刑務所へ送ったデパートのオーナーに復讐するため、出所したメアリーはオーナーの息子リチャードに自分を愛させようとするが、そのうちにメアリーも愛してしまう。

 1920年代のサイレント期に高い人気を誇ったタルマッジが、製作を兼ねて主演したドラマである。1時間45分という、当時としては長尺なドラマの堂々たるメインを張っていることからも、当時のタルマッジの勢いを伺い知ることができる。

 タルマッジは無実の罪を着せられる可哀そうな役柄、「法律の範囲内で」復讐を実行するアクティブな役柄、復讐相手の息子に本気で愛してしまう役柄と様々な面を1本の作品の中で見せてくれる。豪華な衣装もふんだんに披露され、まさにタルマッジによるタルマッジのための作品となっている。

 ストーリーはなかなか工夫が凝らされている。あくまでも「法律の範囲内で」復讐を実行することで、ハッピー・エンドが与えられる資格を得るという用意周到さは見事だ。また、警察やデパートのオーナーとの騙し合いや知恵比べは、同時期の作品にはないものとなっている。

 監督のフランク・ロイド、脚本のフランセス・マリオンといった一流どころのスタッフを揃え、一級のメロドラマとなっている「法に泣く女」は、タルマッジの魅力溢れる作品となっている。タルマッジは、トーキーになり没落していくスターの1人ではあるが、一流の製作者のジョセフ・M・シェンクが夫だったこともあり、幸せな女優でだったことは間違いない。