「LIFE AND PASSION OF CHRIST(イエス・キリストの生涯と受難)」(1903−1905)

「LIFE AND PASSION OF CHRIST(イエス・キリストの生涯と受難)」(1903−1905)

 フランスのパテ社が製作。パテ社の製作責任者だったフェルディナン・ゼッカと、パテ社で監督していたリュシアン・ノンゲの2人によって製作された。

 1902年から製作され、1903年に一旦完成したが、いくつかのシーンを追加し、最終版は1905年に完成した。最終版は、31の場面から構成され、44分にわたる作品となった。当時としては、最も長い映画だったと言われている。

 場面説明の字幕の後に、固定カメラで舞台の上を撮影するようなスタイルで、悪い言い方をすると紙芝居的な作品だ。しかし、決してつまらない映画ではない。キリストの誕生から死までを描いたこの作品は、キリストの生涯をしっかりと映画に刻み込もうという意思が感じられる。有名なエピソードを散りばめ、最後の晩餐やキリストが十字架をかついで歩くシーンでは、構図にも工夫が見られる。キリストが水の上を歩く奇跡は、二重写しを使って見せようとしているが、キリストの姿に水が透けてしまっておりうまくはいっていない。だが、なんとかキリストの奇跡を映画に焼きつけようという意思が伝わってくる。

 当時の、有名な原作や舞台を映画化した作品がみなそうであるように、この作品も、キリストの生涯を知らなければ理解することは難しい。したがって、万人が楽しめる作品ではないが、それでも当時の映画人の野心が映画全体から(当時としては長い上映時間も含めて)伝わってくる作品である。
 
 当時の映画作品はまだ15分にも満たないものが多かった。しかし、そんな短い時間の中でも、有名な戯曲や小説の映画化が行われてきた。当然、ストーリーをすべて語ることはなされず、有名な一場面を抽出して再現するというものがほとんどだった。ここで大事なのは「有名」であるということだ。誰でも知っているくらい有名でなければ、意味をなさないのだ。たとえば、誰でも知っているシーザーの暗殺であれば、「ああ、これがあのシーザーの暗殺シーンか」と思えるが、誰も知らないどこかの国の元首の暗殺を見せられても、「誰かが誰かに殺された」という認識しか出来ない。

 その意味で、キリストは(もちろん、特にキリスト教圏においてだが)当時もっとも適して題材であったといえるだろう。この作品は全体で40分以上の作品だが、数分の断片的なエピソードが組み合わさって出来ている。当時の標準的な映画作品をつなげて1つの作品と仕上げた作品といえる。この手法は、キリストという超有名人であり、有名なエピソード(病気の人々を治す、最後の晩餐)の所持者でなければ、決して40分以上の作品にはなり得なかった人物を取り上げたからこそ可能だったといえる。



(DVD紹介)

「LIFE AND PASSION OF CHRIST」

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