フランスの連続映画 「ファントマ」「プロテア」

 この年、アメリカでは連続映画「キャスリンの冒険」が人気を得ていたが、連続映画の草分け的存在である「ジゴマ」を生み出したフランスでも連続映画が製作され人気を得ている。

 ゴーモン社のルイ・フイヤードが監督した「ファントマ」(1913〜1914)は、1911年に出版された大衆小説の映画化である。怪盗ファントマが様々な人物に変装して探偵とジャーナリストに追われるストーリーに、女性の存在が絡む。パリの街を魅力的に捉え、ナイトクラブなどの室内シーンもリアリティがあったと言われている。また、物語は簡潔で、単調さも冗漫さもなく人気を呼んだが、第一次大戦によって中断を余儀なくされてしまった。ファントマを演じたルネ・ナヴァルの元には毎日数百通のファンレターが届いたという。

 フイヤードは他にも、喜劇シリーズの「おかしな生活」シリーズも製作した。市井の人びとによって繰り広げられるコメディで、1918年までに30本ほどが製作された。

 「ジゴマ」を監督したヴィクトラン・ジャッセは、体にぴったりとした黒タイツを着た女盗賊が秘密文書を盗み出し、貴婦人・ジプシーなどに変装して逃亡する連続映画「プロテア」製作していたが、撮影中に急死してしまう。「プロテア」は他の監督によって1913年に完成され、3本の続編が作られた。

 フランス・アメリカ以外でも、このような連続映画は、デンマーク、イギリスでも作られるようになる。



(映画本紹介)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

無声映画芸術への道―フランス映画の行方〈2〉1909‐1914 (世界映画全史)

映画誕生前から1929年前までを12巻にわたって著述された大著。濃密さは他の追随を許さない。