セシル・B・デミルとグロリア・スワンソンのコンビ作

 セシル・B・デミル監督とグロリア・スワンソンのコンビによるセックス・アピール映画は、この年も「何故妻を換える?」「人間苦」(1920)といった作品が製作されている。

 「何故妻を換える?」は、妻が家庭に収まって落ち着いてしまったことを不満に思って別の女性と再婚した夫と、夫を取り戻すために魅力的な女性に変身する妻を描いた作品である。夫婦の幸せを保つため(夫を他の女に取られないため)には結婚後もロマンスが必要だという内容の映画である。ビーブ・ダニエルズが夫を誘惑する場面は、濃厚なセックスに満ちている。内容は不道徳だが結末を道徳的とするという、当時デミルが監督したセックス・アピール映画ではおなじみのパターンの作品であるが、エルンスト・ルビッチやフランク・キャプラ以前に、デミルが軽快な風俗劇に秀でていたことを証明した作品とも言える。

 一方で、デミルのセックス・アピール映画は道徳的な面から反対キャンペーンを引き起こしてもいる。デミルは道徳的な面からの反対キャンペーンに対して、1921年に「アイデア・コンクール」を実施し、世間から題材のアイデアを募集している。このコンクールは、「十誡」(1923)へと結実することになる。

 アレキザンダー・ウォーカーはこのデミル映画の道徳の描き方について次のように書いている。

 「デミルはハリウッドに、道徳的な結末が不道徳な経過をすべて解消するという倫理学をもたらした」

 ちなみに、セシルの兄のウィリアム・デミルも映画監督として活躍していた。ウィリアムは、ロイス・ウィルスン主演「真夏の狂乱」(1920)などを監督している。