映画評「案山子(スケアクロウ)」
原題「THE SCARECROW」 製作国アメリカ
ジョセフ・M・スケンク・プロダクションズ製作 メトロ・ピクチャーズ・コーポレーション配給
監督・脚本エドワード・F・クライン 監督・脚本・出演バスター・キートン
1つの部屋でルームメイトと暮らしているキートンは、様々な工夫を凝らして家事を簡略化して暮らしている。そんなキートンは犬に追い掛けられるなどの災難に会いながらも、愛する女性の愛を勝ち取る。
喜劇的なアイデアと、キートンのアクロバットの両方が楽しめる作品である。冒頭のルームメイトとの暮らしぶりのシーンは、アイデアが素晴らしい。天井からぶら下がった調味料を見事に2人で使いこなすシーンは優雅さを感じさせるほど見事だ。また、歯とドアのノブを紐で結びつけて、ドアを勢いよく開く力で痛む歯を抜こうとするが、ドアは内開きだったというギャグも秀逸だ。
その後の追いかけっこのシーンではキートンのアクロバティックな芸を見ることができる。廃墟となった家の壁の上で、犬と追いかけっこになるシーンは身体を張っている。また、案山子のフリをして追い掛ける人々を騙すギャグもいい。馬に乗って逃げようとするも、リアルな木馬だったというギャグもおもしろい。チャップリンが木に扮する「担え銃」(1918)を思わせるこれらのギャグは、モノクロだからこそ成立するギャグといえる。
また、シナリオにも工夫が凝らされている。冒頭で部屋の様々な設備(食べ残しを簡単に外に捨てる設備)などは、単体のギャグでもある一方で、犬に追い掛けられるシーンで再び活用される。また、バレエのポーズを取っている女性を見て自分へのアピールだと男性が勘違いするギャグは、後半でキートンが靴の紐を結んでいるのを、跪いて求婚しているのと勘違いされるギャグで、より効果的に繰り返される。
シナリオにも工夫が凝らされ、アイデアも豊富で、キートン一流のアクロバットも見られる。「案山子」はそんな楽しい作品だ。
- 出版社/メーカー: パイオニアLDC
- 発売日: 2005/03/25
- メディア: DVD
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (33件) を見る