松竹 その他の動き 1927年

 後の大監督小津安二郎が、1927年に24歳で監督に昇進している。デビュー作は時代劇「懺悔の刃」(1927)だった。小津が時代劇を手がけたのは、「懺悔の刃」だけである。前科者で更生しようとしている男と、泥棒をやめない弟と、男のかつての仲間などが絡んで、波乱にとんだ物語が展開される。小津はこの後、ドタバタ喜劇を経て、小市民の生活を題材にしていき、市井人の詠嘆と絶望に、批判精神の一端を見せていくことになる。

 松竹蒲田を初期から引っ張っていた島津保次郎は、鈴木伝明主演の「海の勇者」(1927)を監督している。菊池寛の一幕物「海の勇者」を映画化した作品で、敵対する2つの村が少年の死をきっかけに和解する物語だ。

 他にも当時の松竹は、独立プロダクションの阪妻プロの時代劇を配給する一方で、不振だった蒲田時代劇の製作を取りやめ、1927年11月に時代劇を下加茂撮影所に集約させている。