ニッケル・オデオンの誕生(1)

 この年のアメリカでは、ニッケル・オデオンの誕生という大きな出来事があった。

 ニッケル・オデオンはピッツ・バーグに誕生した映画館のことで、朝8時から真夜中まで、1番組約20分程度で映画を上映した。入場料を5セント、すなわちニッケル銅貨だったことから、「ニッケルオデオン」と呼ばれるようになった。

 英語のわからない、ヨーロッパからの移民労働者たちは、ヨーロッパにいた頃よりも持て余した暇をつぶす必要があった(ヨーロッパよりも労働時間が短かったため)。ニッケル・オデオンが誕生するまでは、酒場(サルーン)で酒を飲んだり、トランプ賭博に興じたりし、スモーキング・コンサートと呼ばれる常設のミュージック・ホールで10〜20セント支払って出し物を見たり、ペニー・アーケードと呼ばれた蓄音機などの機械の見世物を楽しむなどをして暇をつぶした。

 そんな移民労働者たちが一気にニッケルオデオンに詰め掛けた。ニッケルオデオンの経営者は大儲けし、1週間分の利益で、もう1つの映画館を開くことができるほどだった。