映画評「罪と罰」

※ネタバレが含まれている場合があります

[製作国]ドイツ [原題]RASKOLINIKOW [英語題]RASKOLNIKOFF

[監督・脚本]ロベルト・ヴィーネ [原作]フョードル・ドストエフスキー

[出演]グリゴリ・クマーラ

 貧しいラスコーリニコフは、「選ばれた人間は、世の中のためには多少の罪悪は許される」という考えのもとに、高利貸しの老婆を殺害する。だが、目撃された老婆の妹まで殺してしまい、罪の意識に苛まれる。家族のために自己犠牲を重ねるソーニャの姿を見て、ラスコーリニコフは罪を告白する。

 ドストエフスキーによる有名な原作の映画化。ドイツ表現主義の最初の作品にして極北に位置する「カリガリ博士」(1919)を監督したロベルト・ヴィーネが監督・脚本を担当している。

 「カリガリ博士」の成功を再現しようと試みられた作品であることは一目瞭然だ。ラスコーリニコフの不安定な心理を、「カリガリ博士」を使いまわしたかと思わせるくらいそっくりのセットで表現してみせる。だが、セット自体は見事なのだが、心理描写を除いてドストエフスキーの原作のあらすじをなぞったかのような展開は、安っぽい犯罪ドラマの域を出ていないように感じられる。

 オープニング・タイトルでも強調されたモスクワのプロの劇団員の重厚な演技や、表現主義のセットなど見所はある作品だが、現実的なストーリーと表現主義のギャップが埋められず、どこか中途半端な印象を受けてしまった。


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