2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「女優ナナ」 ジャン・ルノワール×エミール・ゾラ

後の巨匠ジャン・ルノワールは、「女優ナナ」(1926)を監督している。自分のプロダクションで、制作費を自ら調達して製作した。ゾラの原作を元に、主要人物を20人程度から3人に減らすなどいくつか改変された。ドイツとフランスの撮影所で撮影され、…

フランス ジャック・フェデーの映画製作 「カルメン」

後にフランスを代表する監督の1人となるジャック・フェデーは、「カルメン」(1926)をアルバトロス社のためにスペインで撮っている。ラケル・メレー主演で、リアルティ溢れる作品だったという。ちなみに、当時のフェデーの監督の様子について、ジョルジ…

ジェルメール・デュラック、ジャン・エプスタンらの活躍とフランス印象主義

サイレント期に活躍した数少ない女性監督の1人であるジェルメール・デュラックは、ゴーリキー原作「勇敢な人々の愚行」(1926)で、黒海沿岸の猟師たちの生活を描いている。感覚によって演出し、文学的論理から抜け出すというデュラックの理想は実現で…

フランス マルセル・レルビエ「生けるパスカル」と独立プロの終焉

マルセル・レルビエ監督の「生けるパスカル」(1926)が公開されている。死んだと思われていた男性が実は生きており、以前とは別の女性と愛し合うようになる物語で、イタリアの有名な小説家・劇作家ピランデッロの原作である。カフカ的セットと構図が印…

その他のソ連映画 1926年

他にもソ連では、国立映画学校の校長も努め、ソ連映画の父とも言えるウラジミール・ガルジン監督、レーニンの映画的な考えを成文化したルナチャルスキー脚本の「熊の結婚」(1926)などが作られている。 前提的な舞台から映画へと進出していたエクセント…

ソ連 「母」 プドフキンによるモンタージュの実践

ゴーリキー原作の映画化である「母」(1926)は、フセヴォロド・プドフキン監督による作品である。無学な母親が、革命的な労働者の息子を助けるうちに革命意識に目覚めるという内容で、個人を美しいヒーローに仕上げた作品とも言える。 プドフキンは、対…

1926年のソ連映画界とジガ・ヴェルトフ

革命による混乱から閉鎖されたところも多かったロシア全土の映画館は徐々に再開され、様々な外国映画が公開された。この頃のソヴィエト映画のシェアは低く、1926年には興行の15%しかなかったという。 ニュースやドキュメンタリーに価値を置き、「キノ…

その他のアメリカ映画 1926年

かつて「愚者ありき」(1915)に出演し、ヴァンプ役で人気を得たセダ・バラは、この頃になると舞台に転じ、映画にはほとんど出演していなかったが、1926年にかつて自分が演じた役のパロディ映画に出演している。 「あれ」(1927)で“イット・ガ…

ロナルド・コールマンの大活躍 「ボー・ジェスト」「お転婆キキー」「夢想の楽園」

コールマン髭で有名な大スターのロナルド・コールマンは、「ボー・ジェスト」「お転婆キキー」「夢想の楽園」(1926)に出演し、大活躍を見せた。 「ボー・ジェスト」は、砂漠を舞台にした作品で、ジェスト三兄弟の肉親愛、自己犠牲をテーマにした作品であ…

「戦艦くろがね号」とウォーレス・ビアリーへのコメディ再進出

「幌馬車」(1923)でスター監督となったジェームズ・クルーズは、「戦艦くろがね号」(1926)を監督している。19世紀に北アフリカの海賊相手に戦ったアメリカの帆船戦艦を描いたアクション作品であり、チャールズ・ファレルとウォーレス・ビアリ…

上山草人のハリウッドでの活躍 「海の野獣」「マンダレイへの道」

「バグダッドの盗賊」(1924)で、モンゴルの王子役を演じて注目を集めた日本人俳優の上山草人は、この頃の多くのハリウッド映画に出演していた。この年は不気味な悪役を演じた「海の野獣」(1926)や、トッド・ブラウニング監督、ロン・チェイニー…

「栄光」 第一次大戦を描いた映画がジャンルとして定着

「ビッグ・パレード」(1925)のヒットもあり、第一次大戦を描いた映画が1つのジャンルとして定着しつつあった。この年には、ヒット舞台劇の映画化である「栄光」(1926)が、ラオール・ウォルシュ監督で作られている。第一次大戦中のフランス戦線を…

「悪魔のサーカス」 ベンヤミン・クリステンセンとMGMの戦い

かつて「魔女」(1922)を監督し、北欧からハリウッドへ招かれていたベンヤミン・クリステンセンは、ノーマ・シアラー主演の「悪魔のサーカス」(1926)を監督している。だが、「THE LIGHT ETERNAL」のタイトルで書かれたクリステンセ…

コメディの変容 レイモンド・グリフィス、W・C・フィールズ・・・

コメディの分野では、チャールズ・チャップリン、バスター・キートン、ハロルド・ロイド、ハリー・ラングドンといったコメディアンが活躍する映画が変わらず作られていた一方で、この頃になると「無花果の葉」(1926)のように、監督が主導で作られた作…

マック・セネットの凋落

この頃活躍していたハリー・ラングドンは、スラップスティック・コメディの始祖であるマック・セネットが見出した最後の大物コメディアンと言われている。かつてはスラップスティック・コメディの帝王だったセネットだが、時代は短編喜劇映画から長編へと移っ…

ハリー・ラングドンの独立

ベビー・フェイスでひょうひょうとしたおかし味とペーソスを兼ね備えていたハリー・ラングドンの人気が高まっていた。からだつきも幼いラングドン演じる主人公は赤ん坊みたいに純真で、世間のちょっとした出来事も驚異に感じられた。そんなハリーがいろいろな…

「真紅の文字」 ギッシュとシェーストレームのタッグ

ギッシュは、ナサニエル・ホーソーン原作の映画化「真紅の文字」(1926)にも出演している。ギッシュは、スウェーデンで活躍し、ハリウッドへやって来たヴィクトール・シェーストレームに監督を依頼した。ギッシュは監督との対話で演技をする役者で、シ…

「ラ・ボエーム」 リリアン・ギッシュの女優魂

かつてD・W・グリフィス監督とのコンビで映画史に残る作品を残したリリアン・ギッシュは、見事な演技を見せ続けた。 ギッシュは、MGMと2年で6本の作品に出演する契約を行った。この頃になると映画は分業制となっていたが、グリフィスと別れた後のギッ…

「黒い鳥」「マンダレイへの道」 ブラウニング=チェイニーのタッグ

トッド・ブラウニングとロン・チェイニーは1925年からコンビ作を連発していたが、この年は「黒い鳥」「マンダレイへの道」(1926)が作られている。 「黒い鳥」は、せむしの慈善活動家を隠れ蓑にしている悪党の物語である。主人公は自分を追い込んだ…

ユナイテッド・アーティスツの苦境

かつて、グリフィスのほかにチャールズ・チャップリン、ダグラス・フェアバンクス、メアリー・ピックフォードの4人の巨人が設立した会社として注目を集めたユナイテッド・アーティスツだったが、グリフィスの苦境、ヒットはするが製作費も莫大なフェアバンクス…

「ダグラスの海賊」 ダグラス・フェアバンクスの絶頂期

ダグラス・フェアバンクスは、「ダグラスの海賊」(1926)を製作・出演している。ガレオン船が舞台で狭苦しい階段や船室でアクションが爆発した作品となっている。当時11台しなかったテクニカラー・カメラのうち4台を使用してカラー撮影を行うなどして…

「サタンの嘆き」 D・W・グリフィスの評価は上がらず

かつての栄光を失っていたD・W・グリフィスは、監督した作品の興行的失敗が続いたため、ユナイテッド・アーティスツの株を持ったまま、パラマウント系の雇われ監督となっていた。この年は「サタンの嘆き」(1926)を監督し、苦しかった経済状況もいく…

サミュエル・ゴールドウィンとゲーリー・クーパーのすれ違い

一匹狼のプロデューサーとして活躍していたサミュエル・ゴールドウィンは、監督を大事にした人物としても知られる。ゴールドウィンは、1920年代にはヘンリー・キングを監督として好んで使った。 キングは、スターだったリチャード・バーセルメスらと共に…

「モアナ」 ドキュメンタリーの誕生

「モアナ」(1926)は、辺境の地で厳しい自然と向き合う人々を情感溢れる映像で捉えることを好んだロバート・フラハティが監督した作品である。ジェシー・L・ラスキーがフラハティに監督を依頼し、撮影はサモア島で行われた。フラハティは撮影に膨大な…

「チャーリー・チャン」シリーズの登場と刑事もの

この時代までに、刑事が犯罪捜査をするという作品はあまりなかった。犯罪を取り上げた作品のほとんどは上流階級を主人公にし、上品で陽気な探偵が登場して事件を解決するというものが多かったのだ。ハリウッドの自主検閲によって陰惨な犯罪が描けなかったた…

グロリア・スワンソンとジョゼフ・P・ケネディとFBO

当時、人気の絶頂期にあったグロリア・スワンソンは、1926年5月に独立プロを作って、ユナイテッド・アーティスツと配給契約を交わした。このときに、事業の相談相手としてジョゼフ・P・ケネディと出会った。 後のアメリカ大統領であるジョン・F・ケネ…

グレタ・ガルボとジョン・ギルバート

「肉体と悪魔」(1926)でグレタ・ガルボはジョン・ギルバートと共演した。2人は恋に落ちたが、結婚はしなかったという。結局ガルボは生涯で1度も結婚しなかった。「良き友人は、ずっと一緒にいる夫よりも望ましい」というのがガルボの考え方だったと言…

「肉体と悪魔」 ガルボの人気が決定的に

グレタ・ガルボが「明眸罪あり」に続いて出演したクラレンス・ブラウン監督の「肉体と悪魔」(1926)は、ジョン・ギルバートとガルボの初共演作である。幼なじみの2人の男と魅惑的な女性の三角関係が、男女が共に横たわるという当時としては大胆なラブ・…

ガルボとスティルレルの幻のコンビ作「明眸罪あり」

「イバニエスの激流」がヒットしたグレタ・ガルボは、自身をアメリカへ連れてきてくれたモーリッツ・スティルレル監督の「明眸罪あり」(1926)に出演する。しかし、4分の1ほど撮影が終わった段階で、アーヴィング・サルバーグがスティルレルを降板さ…

グレタ・ガルボの魅力とは?

グレタ・ガルボの魅力は、後のグレース・ケリーと同じように、高貴さによって包まれていた。ガルボの身だしなみのよさは、モーリッツ・スティルレルによって作り上げられたものと言われている。 また、アレグザンダー・ウォーカーは「スターダム」の中で、ガ…