1919

 映画評「最後の本塁打」

原題「THE BUSHER」 製作国アメリカ トマス・H・インス・コーポレーション製作 パラマウント配給 製作トマス・H・インス 出演チャールズ・レイ 田舎町の草野球で活躍しているベンは、偶然からメジャー・リーグに誘われるが、活躍できずにクビになる。田舎に…

 映画評「THE SON-OF-A-GUN」

原題「WAGON TRACKS」 製作国アメリカ ゴールデン・ウェスト・フォトプレイ社製作 監督・製作・脚本・主演ギルバート・M・アンダーソン 荒くれ者だが優しい面もあるビルが、ある西部の町にやって来る。ダンスホールで楽しもうと銃をぶっ放したビルは、町か…

 映画評「疾風の如くに」

原題「THE ROARING ROAD」 製作国アメリカ フェイマス・プレイヤーズ=ラスキー製作 パラマウント・ピクチャーズ配給 監督ジェームズ・クルーズ 出演ウォーレス・リード セオドア・ロバーツ カー・レースに情熱を燃やすJ・D・ウォードは、彼の娘ドロシーと恋…

 映画評「VICTORY」

製作国アメリカ モーリス・ターナー・プロダクションズ製作 パラマウント=アートクラフト・ピクチャーズ配給 製作・監督モーリス・ターナー、原作ジョゼフ・コンラッド 出演ジャック・ホルト シーナ・オーウェン ロン・チェイニー ウォーレス・ビアリー 南海…

 映画評「泥中の薔薇」

原題「THE WICKED DARLING」 製作国アメリカ ユニヴァーサル・フィルム・マニュファクチャリング製作・配給 監督トッド・ブラウニング 出演プリシラ・ディーン、ロン・チェイニー 女泥棒のメアリーは、かつて金持ちだったケントと出会い、恋に落ちる。ケントは…

 映画評「アルプス颪」

原題「BLIND HUSBANDS」 製作国アメリカ ユニヴァーサル製作・配給 製作・監督・原作・脚本・編集・美術エーリッヒ・フォン・シュトロハイム アルプスにバカンスにやって来たアームストロング氏と妻のマーガレット。夫に放っておかれているマーガレットは、女好…

 映画評「不良少女」

[製作国]アメリカ [原題]THE HOODLUM [製作]メアリー・ピックフォード・カンパニー [配給]ユナイテッド・アーティスツ[監督]シドニー・フランクリン [製作総指揮]メアリー・ピックフォード [原作]ジュリー・マチルド・リップマン [撮影]チャールズ・ロッシャ…

 映画評「孤児の生涯」

原題「DADDY-LONG-LEGS」 製作国アメリカ メアリー・ピックフォード・カンパニー製作 ファースト・ナショナル配給 製作・主演メアリー・ピックフォード 監督マーシャル・ニーラン 原作ジーン・ウェブスター 孤児院で育ったジュディは、両親がいないにも関わ…

 映画評「想出の丘へ」

原題「HEART O’THE HILLS」 製作国アメリカ メアリー・ピックフォード・カンパニー製作 ファースト・ナショナル・エキジビターズ・サーキット配給 監督ジョセフ・ド・グラス、シドニー・フランクリン 製作総指揮・出演メアリー・ピックフォード 山に住む少女メ…

 映画評「夫を変へる勿れ」

原題「DON'T CHANGE YOUR HUSBAND」 製作国アメリカ アートクラフト・ピクチャーズ製作・配給 監督セシル・B・デミル 脚本ジャニー・マクファーソン 出演グロリア・スワンソン 若妻のレイラは、身なりも仕草もだらしのない夫ジェイムズに嫌気がさしている。…

 映画評「男性と女性」

原題「MALE AND FEMALE」 製作国アメリカ パラマウント・ピクチャーズ製作・配給 製作・監督セシル・B・デミル 脚本ジャニー・マクファーソン 出演グロリア・スワンソン トーマス・ミーアン セシル・B・デミルは、1913年に「スコウマン」で映画監督とし…

 映画評「悪魔絶滅の日」

製作国アメリカ 原題「SCARLET DAYS」 D・W・グリフィス・プロダクションズ製作 アートクラフト・ピクチャーズ・コーポレーション配給 監督・製作D・W・グリフィス 脚本スタナー・E・V・テイラー 撮影G・W・ビッツァー 出演リチャード・バーセルメス…

 映画評「スージーの真心」

原題「TRUE HEART SUSIE」 製作国アメリカ D・W・グリフィス・プロダクションズ製作 アートクラフト・ピクチャーズ配給 製作・監督D・W・グリフィス 出演リリアン・ギッシュ、ロバート・ハロン スージーとウィリアムは幼馴染み。大学に進みたいが経済的に…

 映画評「勇士の血」

製作国アメリカ 原題「THE GIRL WHO STAYED AT HOME」 D・W・グリフィス・プロダクションズ製作 パラマウント・ピクチャーズ配給 監督・製作・脚本D・W・グリフィス 脚本スタナー・E・V・テイラー 撮影G・W・ビッツァー 編集ジェームズ・スミス 出演アドルフ…

 映画評「大疑問」

原題「THE GREATEST QUESTION」 製作国アメリカ ファースト・ナショナル・ピクチャーズ製作・配給 監督・製作D・W・グリフィス 撮影ビリー・ビッツァー 出演リリアン・ギッシュ ロバート・ハロン 幼い頃に殺人を目撃した記憶を持つネリーは、両親を失った後…

 映画評「散り行く花」

原題「BROKEN BLOSSOMS」 製作国アメリカ D・W・グリフィス・プロダクションズ、パラマウント・ピクチャーズ製作 ユナイテッド・アーティスツ配給 製作・監督・脚本D・W・グリフィス 出演リリアン・ギッシュ リチャード・バーセルメス D・W・グリフィスは「…

 その他の日本映画界 1919年−大正8年

1919年8月15日、京都・新京極が劇場や映画館を「睦み日」として無料開放している。これは、松竹が主唱し、五条興行会が協力して行われたものだ。当時人々は、物価高などに不満を持っており、そういった不満を晴らしてもらおうというものだった。 現在…

 日本 輸入映画 1919年−大正8年

この年、日本で公開された主な映画には次のような作品がある。 「桜子」「ロミオとジュリエット」「犬の生活」「お雪さん」「ウーマン」「舞姫タイス」(アメリカ) 「王家の虎」「十字軍」「トスカ」「復活」(イタリア)、「呪の滝」「紅燈の影」(フラン…

 日本 大手映画会社以外の作品 1919年

大手の映画会社に所属していない人々の作品も製作されている。 人気のあった映画説明者が、自らの理想を映画製作で実現して見せた作品が作られている。古い説明者の中島常誠が本名の石塚忠利の名で製作した「国難」(1919年)がそれである。 1906年…

 日本 天活の日暮里撮影所設立と国活の設立

天活は、大阪の新派映画が時代離れしていたため、東京の日暮里で新派を撮影することを決定して、撮影所を作っていた。新派劇団を雇い入れるが、1919年に全焼してしまっている。 かつて天活に所属し、独立して小林商会を設立も失敗していた小林喜三郎は、…

 日本 天活における枝正義郎の挑戦

帰山教正に映画製作のチャンスを与えた天活は、1919年に枝正義郎監督に「哀の曲」の製作を許可している。 枝正は、少年時代から吉沢商店の目黒撮影所で千葉吉蔵の指導を受け、カメラ技巧を持っていた。枝正が撮影した天活の旧劇は、他社の作品と比べて、…

 日本 牧野省三が教育映画制作会社「ミカド商会」設立

日活において時代劇を監督していた牧野省三は、子供の教育上役に立つ作品を撮りたいとかねてから考えていた。牧野は日活に辞表を出し続けていたが、ようやく受け入れられ、1919年にミカド商会という教育映画プロダクションを設立している。ただし、日活…

 日本 日活における日本映画革新運動

日活においては、日本映画革新運動を進めていた田中栄三が、「己が罪」(1919)を監督している。陰ゼリフをやめ、スポークン・タイトルを入れ、ショットを細かく割った作品だったが、全国の映画館の陰ゼリフ屋から日活に抗議が寄せられたという。 またこ…

 日本 「生の輝き」「深山の乙女」の公開と評価

弁士の説明が必要なかった「生の輝き」「深山の乙女」は、当時の映画興行に大きな力を持っていた弁士たちの反対を心配した営業部の判断で公開は1年半遅れてしまった。また、映画の完成度はあまり高くなかったとも言われているが、ジャーナリストたちは試み…

 日本 帰山教正の革新運動の成果 「生の輝き」「深山の乙女」

前年、「活動写真劇の創作と撮影法」という著作を出版して、映画人に影響を与えた帰山教正は、天活と提携して映画製作会社の映画芸術協会を設立し、「生の輝き」「深山の乙女」(1919)を監督している。 弁士のいらない映画、せめて一人の弁士が解説する…

 その他の国々 1919年

中国では、アメリカのユニヴァーサルが中国ロケに訪れた際に、中国の出版社であり、映画製作会社でもあった商務印書館に協力を求めている。撮影後、ユニヴァーサルは機材を商務印書館に譲り渡したという。商務はスタジオも建設し、人気のあった京劇の女形メ…

 朝鮮映画 キム・ドゥサンの連鎖劇

1919年10月27日、俳優キム・ドゥサンが、自身主演の連鎖劇「義理的仇闘」を上演している。連鎖劇とは、舞台と映画を融合させたものである。1918年に、日本の巡回新派劇団が、京城の公演で連鎖劇を上演したのに影響を受けて作られたと言われてい…

 衰退から脱却できないイギリス映画

イギリス映画は相変わらず衰退したままだった。 そんな中、古参の映画製作者であるセシル・ヘップワースは、アルマ・テイラー主演の「丘の上の森」(1919)や、ロナルド・コールマンが小さな役で出演した「シーバ」(1919)を製作している。 一方で…

 ソ連で製作された映画 1919年

国家による映画製作が行われるようになっていたソ連では、1919年に13本の劇映画を製作することが出来た。内容は赤軍やロシア革命の正当性を表現したものだったが、技術的にはプリミティヴであったという。一方、かつてのロシアの映画人たちは国外に亡…

 ソ連政府による映画の誕生

1919年8月27日、レーニンはソビエト政府による映画の誕生を決議する政令に署名し、すべては人民教育委員会の管轄下に置かれるようになった。映画の国有化宣言である。レーニンは、幅広い娯楽映画の輸入公開を許し、諸外国も市場拡大のため自国のソビ…